「中国フィールドスタディに行って」
中国フィールドスタディCで、11日間、北京・内モンゴル・上海と3つの土地を見て回った。2001年、当時の小泉首相は積極的に中国への訪問を行い、二国は少しずつ友好関係を築いていたように思えた。しかしその関係が一気に崩れる事態があった。一つは首相による靖国神社参拝である。これは日本と他国との間で歴史認識の違い、曖昧さがあるためである。小泉首相は、靖国に参拝するのは過去の戦死者に敬意を表すためだと言うが、八月一五日に靖国参拝を行うと繰り返し強調してきたことは、逆に現在そのことに大きな象徴的意味があることを示しているようにも捉えられるのではないだろうか。もう一つの問題が棚上げ問題である。ここ最近尖閣諸島沖での衝突や漁船の領海侵入などのニュースをよく目にするが、マスコミが両国の対立をあおるような報道があまりにも多い。どちらも政治的な問題で私たちが直接解決することは出来ないが、わたしたちのような若い人達が個人的にでも友好的な関係を築いていけたらといいなと思う。日中関係悪化の原因は、大きく分けると以上の二つが挙げられると思った。北京大学の教授は、以上のような内容を踏まえながら、「中国人は日本との友好を望んでいる」と話してくれた。それをこの10日間で、肌で感じるとともに「二度目の」国交正常化に向けて自分なりに考えられるような旅にしたいと思いフィールドスタディをスタートした。
同じ中国国内でもその土地によって全く雰囲気が違うのが印象的だった。まず北京は内陸部に位置しているせいか空気が悪く、黄砂も合わさり数メートル先がどよんでおり、やはり大気汚染が深刻なのかなと感じたのが素直な印象だった。また街中で貧しい人を多く見かけ貧富の差を感じた。内モンゴルは想像していたよりもずっと発展していて、砂漠も草原もとても綺麗で素敵なところだった。草原で見かけた多くの風力発電は自然とミスマッチしていたが、内モンゴルの土地の特徴に合わせた環境に優しい方法でエネルギーを創出していたのが印象的だった。上海はビルなど街全体がきらびやかで華やかで、ここ最近で急激に発展が進んでいるのだということを身をもって感じることができた。一方で西洋様式の建物を多く見かけ、近代化と歴史を同時に感じることができた。
NHKの上海事務局では奥谷さんのお話を聞き、わたしたちのフィールドスタディと通じる部分がいくつかあった。北京支局は外交問題や記者会見など、ネタが既に上がっているニュースを取り上げるのに対し、奥谷さんのいる上海支局では社会の変化や経済の動きを捉え、自らその問題を見つけるということが要求される。わたしたちのフィールドスタディもそうだ。世間にどれだけ目を向けて問題を発掘できるか、世の中に疑問、関心を向けられるかが鍵となる。自分で中国という国を感じて、たくさんの関心を持つことによってこの旅の価値は何倍にもなると思う。奥谷さんの作った報道の特集は「留守児童」で、上海のきらびやかな発展は農村部の人々の出稼ぎによって成り立っているという現状から、国民性の高まりによって中国の影の部分に対する疑問が生まれ、留守児童が注目されるようになった。人口が都市部に集中するのを防ぐ目的から都市戸籍、農村戸籍があるのを初めて知り、保険や社会保障制度などの中国の問題を象徴しているように感じた。これらに目を向けることで、中国国内で社会改革が起こるきっかけとなることを願いたい。
最後に、このフィールドスタディを通じて「中国とはこういう国だ」という定義づけは出来ないと感じた。中国は大国で人口も多い分様々な人が混在し、民族も合わさり価値観が多様である。しかし全体を通して、反日感情などほとんど感じることもなくむしろどこに行っても皆友好的に接してくれた為、中国に対する見方が大きく変わった。歴史的、政治的な背景が大きく影響しなにかと衝突が多い二国だが、今後お互いにもっと歩み寄っていけると確信できた旅であった。このフィールドスタディで感じたことはかけがえのないものであり、旅行では経験できないことが多くあった。この経験、また一緒に過ごした仲間は一生の財産であり、ずっと大切にしていきたいと思った。
最後になりますが私たちにたくさんの知識と財産を与えてくれた宋先生に多大な感謝をし、レポートを終えたいと思う。本当にありがとうございました。