学位博士 (Ph. D.)
最終学歴米国Rochester 大学経済学部
専門分野理論経済学、政治哲学
主要研究テーマ一般均衡理論、公正としての正義
教員個人のHP鈴木岳公式ウェブサイト
初級ミクロ経済学、ゼミナール
理論・計量経済学会、日本哲学会、日本倫理学会、数理経済学会副会長(総務担当理事を兼任)、Mathematical Reviews: Reviewer
政治哲学・公共哲学
現代の民主的な社会の市民にとって、どのような政策・制度が正当であり、市民はいかなる自由と権利を持ち、いかに行動するべきであるかといった事柄に対して判断を下すことは、各人に課せられた責任である。責任ある判断とは、もちろん単なる伝聞や「世間の常識」ではなく、自身による理性的根拠を伴う判断を意味する。残念ながら、経済学の知識だけではこうした事柄を判断するために十分な理性的根拠を得ることはできない。またそもそも、こうした事柄の全てを教えてくれる一つの学問などは存在しない。これらは政治哲学に属する問題であるが、「哲学」とは出来上がった学説・理論を教示する学問ではなく、ただ同じ哲学的関心を持つ仲間との議論を通じて少しでも理解を深めていこうとする一種の実践である。
そこでこのゼミでは、M. サンデル著『これからの正義の話をしよう』の輪読を通じて政治・公共哲学の諸問題を議論する。ゼミ生は担当として割り当てられた箇所を数ページのレジュメにまとめてゼミの初めに発表し、その後で各人は質問や意見を述べて、議論を行う。こうして始まった議論が首尾一貫したものとなるか、何らかのまとまった結論を得るにいたるかどうかは、全く分からない(大抵はそうはならない)。つまり哲学においては、何らかの「成果」と呼ばれ得る結論を生み出すことは一般には極めて難しい。しかし自分とは異なる意見を聞き、考えを述べ合い、説得に努め、相手の考えを納得した場合にはそれを受け入れる、といった過程(それが議論である)を通じて自分自身の意見・考えを深めることができたならば大成功と言うべきなのである(実はこれすらもまた大変に難しいのであるが)。
従って、こうした議論に加わらずにただ他のゼミ生のやり取りを聞いているだけでは、収穫は少ないだろう。教科書について自分の担当箇所でないところも予め読んでおき、積極的に議論に参加することが望ましい。またこのゼミの目的はあくまで上に述べた諸問題についての各人の考えを深めることであって、サンデル教授の著書に対する理解度を試すことではない(もちろんゼミは教科書に対する十分な理解を前提として進めるが)から、教科書のみならず、日ごろからニュースや各種報道に注意を払い、現代社会(かならずしも日本に限らない)で生じている諸問題に関心を持つこともまた大切である。