Professors' Column
教員コラム

11.貴志奈央子(経営学科): 「経営学」を学ぶということ

経営学科准教授 貴志 奈央子

 近年、日本経済の成長が低迷する中、将来的に市場の拡大を期待できる医療や環境に関連した産業規模の拡大に、関心が集まっています。しかし、こうした産業の成長が、国内経済の成長を確実に後押しするというわけではありません。こうした産業の成長を日本経済の成長へと結びつけるには、まず、日本企業が、当該業界における付加価値の高い製品の供給へと、事業構造を転換していかなければいけません。そして、そうした製品を生産し、供給できる能力を有していなければいけません。果たしてこれは、可能なのでしょうか。

 この問いに対し、経営学の既存研究では、次の二つの示唆を提供しています。

 一点目は、貿易と海外直接投資の自由化や円滑化を推進し、新たな事業機会の獲得、および開発と生産の拠点の最適化を進めていくことです(天野 2002; 2005)。厳しいグローバル競争のプレッシャーに晒された企業は、優位性を保てる製品の供給に資源を配分するようになり、収益性の高い製品へと事業構造の転換を推し進めていくことになります。

 そして、二点目は、高い技術力によってのみ生産可能な製品を供給し続けるために、国内の生産能力の維持と強化に努めることです(藤本 2010)。市場からの厳しい要求にも対応し、日本企業だからこそ供給できる製品を生産する能力を持ち続けるためです。

 また、経営学の研究によって示されたこうした示唆は、企業努力を後押しするために、どのような政策的支援が必要となるかも示しくれます。たとえば、貿易と海外直接投資の自由化や円滑化を進めるためには、通関手続きの効率化・簡素化や、関税等の貿易障壁の削減・撤廃などへの働きかけが必要となります。また、日本企業の生産能力を維持し続けるためには、熟練労働者の暗黙知を移転する仕組みの構築が求められています(藤本 2010)。

 このように、「経営学」を学ぶということは、現代社会が直面する問題の解決策を論理的に発見していく方法を習得することです。大学では、皆さんが直観的に感じた疑問に対し、自分なりの解決策を発見するプロセスを満喫して頂きたいと思います。

 <参考文献>
天野倫文(2002)「国際分業と事業構造の変革:グローバル戦略における比較優位の創出」『日本経営学会誌』 第8号 15~31ページ。
天野倫文(2005)『東アジアの国際分業と日本企業:新たな企業成長への展望』有斐閣。
藤本隆宏(2010)「日本に良い現場を残せるか」『中小商工業研究』第102号 4~10ページ。