Professors' Column
教員コラム

29.高崎仁良(経済学科): スリルとサスペンスのAtlanta空港

経済学科教授 高崎 仁良

 今年の春、在米の娘を訪問するため久しぶりにアメリカを訪れた。以前訪米したときはごく短期の旅行だったので、アメリカはほとんど初めてという感覚だった。Atlanta経由Houston行きという経路だ。Atlantaでの乗り継ぎ時間は1時間ちょっとしかない。荷物をとり、それを自分で運ぶことを考えるとほとんど時間がないのに、入国審査ではえらく足止めをくった。
 1万ドル以上所持している場合は申告せよ、とのことなので正直に申告すると、その件の手続きで2箇所も3箇所も連れ回され、立派なヒゲをはやし体格の良い白人職員たちは談笑しながらのんびりと手続きをする。どの部署も同じ手続きをしているようで、質問内容も同じだった。袖の下を期待しているのかも知れないと思ってしまうくらいであった(他国ではそのようなことを何度も経験している)。妻が予約した飛行機の出発時間に間に合わないので急いで欲しいと告げると、Houston行きは日に何本も出ていて便の変更には追加料金はかからないから安心しろとのことだった。
 急ぎ足でも次の搭乗場所までは数10分もかかる距離であり、着いたときには予約した便はとっくに出発してしまっていた。その次の便は予約いっぱいで乗れず、結局乗れるまでにはあと7時間も待たなければならないとのことであった。
 1万ドルの件は申告しなければそのまま入国できただろう。「正直者が損をする」、これがアメリカのシステムなのだと思い知った。それにしてもあの立派な制服を着て恰幅の良い職員たちの態度の冷ややかでいい加減なこと。とにかくアメリカでの私の第1印象はすこぶる悪いものになった。「大事な娘をこんなところに住まわせていたのか!」
 とにかくHouston空港で私たちを待っている娘に連絡しなければならない。妻が公衆電話を使ったが、何が悪いのかつながらなかった。妻は清掃係の女性に相談した。かなり高齢に見える細身の穏やかそうな黒人女性だった。その人は快く自分の携帯電話を貸してくれた。娘には無事連絡がついた。妻がお礼にとその女性に10ドル札を差し出したが、彼女は頑として受け取らず、また必要なときはいつでも電話を貸すから言ってほしいと答えた。立派な制服を着て旅客に冷ややかで、仲間との談笑に熱心な税関職員と、この親切で清廉な黒人女性。このときばかりはこの清掃のおばさんの方がオバマ大統領よりも立派に見えた。
 大学は言うまでもなく勉強するところなのだが、私たち明治学院大学の教員が学問を超えて学生に期待するものは何か。上の話からもうお分かりなのではなかろうか。’Do For Others’ が形骸化しないように努めたい。