Professor Column
教員コラム

36.佐藤成紀(経営学科): 掛け算九九の九の段

経営学科教授 佐藤 成紀

昨年の秋、小学2年の息子が学校で面白いことを習ったと喜んで帰ってきた。「掛け算九九の九の段は覚えなくてもいいんだよ」と両手を広げてニコニコしている。両手のひらを自分に向けて、左手の親指から順番に、一本ずつ指を折っていき、折った指の左の指の本数が十の位、折った指の右の指の本数が一の位を表すので、暗記しなくてよいと言うのである。左の親指を折ると、その左には指がないので、十の位はゼロ、右側には九本あるので、九一が九。左手の人差し指を折ると、左に親指一本と右に八本なので、九二十八。最後に右手の人差し指を折ると、左に八本と右に一本なので、九九八十一。

得意の笑みでしたり顔の息子に、「なぜそうなるか、説明して」というと、「えーっと」と考え始めた。とりあえず、でたらめなロジックで、いろいろ話し始めたが、十分ほどで、なんとか説明のつきそうな答えに近づいてきた。「先生は理由を教えてくれないの」と聞くと、「魔法だよ、と言ってニコニコしてた」とのこと。それはそれで微笑ましいことでよいと思ったが、ハタと日々接している大学生のことが頭に浮かんだ。彼ら彼女らは、小学2年生が「目からウロコ」状態に納得できるように即座に説明できるだろうか。これを読んだ学生諸君が「ばかにしないで下さい!」と奮起してくれれば、このコラムは成功。3分程度で、聞き手が納得できるように、簡潔明瞭に説明してみて下さい。

経済学や経営学の難しい理論も重要だが、簡単なことを、わかり易く、説得力を持たせて説明するという、プレゼンテーションの基本も是非、大切にしてもらいたいと思う。そして、もちろん、私自身も日々の講義や演習で、きちんとしたロジックで説明できているかどうかを、絶えず自らを省みながら精進していきたいと思っている。