Research Institute
産業経済研究所所員就任のお知らせ

2025年7月29日

産業経済研究所では、2025年8月1日付けでUniversity of ManchesterでLecturerを務められている公文譲先生を産研研究員としてお招きすることになりました。 公文先生よりご研究内容とこれからの活動についてお言葉をいただきました。

【ご研究内容の概要】
 私は、1600年から1940年までの日本経済史を比較の視点から研究する、数量経済史学者です。私の研究では、江戸時代から昭和初期までの賃金、人口調査、地価などに関する新たな大規模アーカイブデータを収集し、それを応用ミクロ経済学の手法と組み合わせて分析しています。このような手法を通じて、日本経済を長期的視点から分析し、日本のいくつかの独自の特徴を明らかにしてきました。
 第1に、1910年までの日本は世界でも最も貧しい国の一つでした。第2に、こうした人々は1700年以降、年間325日働くほど勤勉でした。第3に、土地を所有する農民たちからなる、比較的平等な社会でもありました。
 さらにマルサス的な理論枠組みを用いることで、日本が貧しかったのは、日本社会が平等であったことに起因すると示しています。これらの研究はJournal of Economic HistoryやAmerican Economic Journal: Applied Economicsにて刊行されてます。今後は、近代日本に重点を置いて、産業化していく日本についての分析をしていきます。

【産業経済研究所研究員としてのご活動】
 産業経済研究所では、二つの研究に専念したいと思います。一つは、明治学院大学国際経営学科の岡崎哲二先生との共著プロジェクトで、日本における産業化を担った製糸工場などのミクロデータを集める研究をします。このデータを使い、戦前日本の工場において労働者の賃金は生産性の向上と共に上がったか、もしくは雇用者側の労働市場の独占・寡占により低く抑えられていたかを分析する研究です。
 もう一つの研究は、戦前日本の国際移民の数量的研究です。移民のデータを集めることにより、国際移民におけるネットワークの重要性や、海外での成功者はどのような移民であったかを分析する予定です。