Faculty of Economics
経営学特講(明学卒業生たちのリーダーシップ)2026 講演報告No.1

2026年10月21日

【ゲスト講演者】
 株式会社U-NEXT HOLDINGS
 代表取締役社長CEO
 宇野 康秀 様

【講義の概要】
 今回の講義では、株式会社U-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEOである宇野康秀氏(以下、宇野氏)をお招きし、同社の事業やこれまでの歩みを交えながら、リーダーシップ、起業、未来を見据えた経営についてお話いただいた。
 冒頭、U-NEXT HOLDINGSが展開する事業について紹介があった。講義では、同社は売上高約5,000億円、従業員約7,000人の企業として説明された。動画配信サービス「U-NEXT」に加え、同社は、店舗向けのBGMやモバイルオーダーなどのソリューション、カラオケ「JOYSOUND」、通信・エネルギー、金融・不動産、キャッシュレス決済など、幅広い分野で事業を展開している。また、店舗やホテル、病院などの情報化・DXを支えると同時に、音楽ライブやスポーツ中継を含むエンターテインメントを、多様な形で楽しめる環境づくりにも取り組んでいる。
 動画配信サービス「U-NEXT」については、Netflixをはじめとする海外企業が競合する中、作品やスポーツ、音楽ライブなどの豊富なラインナップによって、利用者の幅広いニーズに応える戦略が紹介された。講演時点では、国内の動画配信サービスにおいてNetflixに次ぐ位置にあり、2026年9月にはアプリのダウンロード数でNetflixを上回り、1位となったことも語られた。これは、話題作を中心に加入者を集めることや他社と価格競争をするのではなく、「見たいものがある」サービスを目指し、多様なコンテンツをそろえることを重視した結果だそうだ。また、TBSとの資本業務提携など、国内企業やコンテンツ制作者との連携も進めているという。

 宇野氏が動画配信の構想を持ったのは、明治学院大学に在学していた頃である。当時はレンタルビデオ店が主流だったが、映画好きだった宇野氏は、通信網が発展すれば、いずれ映像を家庭に届ける時代が来ると考えていた。その実現には、まず映像配信を可能にするインフラが必要である。そこで、宇野氏は、音楽放送で使用していたケーブルに光ファイバーを整備し、家庭まで高速通信網を広げる事業に取り組んだ。その後、無料の広告型インターネット配信サービス「GyaO」が開始され、さらに有料サービス「GyaO NEXT」へと発展させ、現在の「U-NEXT」へつなげていった。海外勢よりも早く配信事業に取り組んだ経験と、そこで蓄積したノウハウが、現在の競争力の基盤になっていると説明された。
 宇野氏は大学卒業後、リクルートコスモスに入社して社会人としての経験を積んだ。その後、仲間4人で人材関連サービス会社のインテリジェンスを創業した。人材サービスを始めた背景には、少子化や将来の人手不足、女性や高齢者など多様な人材の活躍が進むという見通しがあった。人口動態から将来の変化を捉え、成長が見込まれる分野に早く取り組むことの重要性が語られた。
 その後、父親が経営していた大阪有線放送社(後のUSEN)を引き継ぎ、経営再建にも取り組んだ。リーマンショックの影響などで厳しい経営状況に直面した際には、当時赤字だったU-NEXT事業の撤退を求められたが、宇野氏は映像配信の将来性を信じ、事業をMBOによって独立させた。U-NEXTはその後、上場を果たし、さらにUSENと経営統合して現在のグループ体制へとつながった。

 講義の中心的なテーマの一つは、宇野氏自身が考えるリーダーシップであった。宇野氏は、学生時代、人前に立って周囲を率いるタイプではなく、リーダーシップに自信がなかったという。そこで、大学生活の中でリーダーとしての振る舞いを学ぼうと考え、プロデュース研究会に所属した。宇野氏は、学内イベントの企画・運営に携わり、ミスターコンテストを開催したほか、大学2年生で部長を務めた。さらに、他大学の企画系サークルの代表者ともネットワークを築き、活動は大きな規模へと広がっていった。こうした経験を通じて、人を動かし、目標に向けて仲間と取り組むことへの自信を得たという。
 宇野氏は高校時代から経営者の本を読み、世の中を変える事業を生み出す経営者に憧れたことが起業を目指すことになった背景だった。一方で、昭和の創業者に見られるような強いカリスマ性は自分にはないと感じていた。そこで、仲間と正しい目標を掲げ、自ら努力して実行し、成果を積み重ねることで信頼を得るという、自分なりのリーダーシップを築いた。カリスマ性だけが経営者の条件ではなく、自分に不足する能力を持つ人とチームをつくり、互いの力を生かして成果を出す方法もある。人それぞれに異なるリーダーシップの形があるという考えが示された。
 また、宇野氏は、リーダーには「未来を読み、描き、そこへたどり着ける地図を描く力」が必要だと述べた。未来を予測するだけではなく、思い描く未来へ到達するには何を、どの順序で実行すればよいのかを考え、道筋をつくることが重要だという。未来を考える際には、自分の感覚を大切にしながら、それが世間一般の感覚とずれていないかを確かめる必要がある。宇野氏は、少し先の未来について予測したことをメモに残し、時間が経ってから振り返ることで、予測する力を鍛えていた。また、アンケートのように条件や聞き方によって結果が左右される数値と、人口動態など比較的確実性の高いデータを見分け、感覚と信頼できるデータを組み合わせて判断する姿勢も紹介された。
 学生へのメッセージとして、宇野氏は「やりたいことが見つかった時に、それを実行できる力が備わっていることが重要」だと述べた。学生時代には、起業家になりたいという思いのほか、映画監督や沖縄でホテルをつくる夢も抱いていたという。宇野氏は、事業を成功させることで、やりたいことを実現できる可能性も広がると語った。また、40代からトライアスロンを始め、2015年には世界選手権に日本代表として出場した経験や、登山にも挑戦した経験を挙げ、「何かを始めるのに遅すぎることはない」と学生に伝えた。
 質疑応答では、人とのつながりの築き方、新しいことを始める際の不安、未来予測の方法、海外経験、仕事と自己実現の関係について質問があった。宇野氏は、人脈の数を増やすこと自体を目的にするのではなく、会いたい相手には目的を明確にして自ら働きかけることが大切だと回答した。また、挑戦には不安が伴うものの、失敗してもうまくいかなければやめて別のことに取り組めばよいとし、悩み続けて行動しない時間こそ惜しいと述べた。海外に行くことについても、行けば必ず成功するという正解があるわけではなく、自分が何を得たいのかを考えることが重要だという。仕事と自己実現については、やりたいことを実現するまでには遠回りや努力が必要になる場合もあり、その機会が訪れた時に実行できる力を身につけておくことが大切だと語った。

【講義の感想】
 今回の講義を通じて最も強く感じたのは、成功する経営者とは、現在の市場で勝つだけでなく、「まだ存在していない未来を想像し、その実現に向けて行動できる人」だということである。特に印象に残ったのは、宇野氏が語った「未来を読み、描き、そこへたどり着ける地図を描く人」というリーダー像であった。
 U-NEXTの動画配信サービスは、現在では多くの人にとって身近な存在となっている。しかし、宇野氏がその構想を持った大学生の頃はレンタルビデオが主流であり、インターネットで映画やドラマを見ることは、まだ現実味のない未来だった。そのような時代に「いずれ映像配信の時代が来る」と考え、光ファイバーなどのインフラ整備から取り組んだという話から、未来を予測するだけでなく、その未来を実現するために現在行動することが重要なのだと学んだ。
 特に興味深かったのは、「便利なものは便利な方向へ進んでいき、不便なところには逆戻りしない」という宇野氏の考え方である。モバイルオーダーや高速通信、携帯電話などを例に、人間はより便利なものを求めるという性質から未来を考えていた。これは単なる勘や直感ではなく、「人間はどのような方向に進みたがるのか」という本質を見つめる姿勢なのだと感じた。
 リーダーシップについての話も、自分の考えを見直すきっかけとなった。私はこれまで、リーダーシップとは人前に立ち、強く周囲を引っ張る能力だと思っていた。しかし宇野氏は、自分にはカリスマ性がないからこそ、能力のある人を集め、チームとして成果を出すリーダーシップを築いていた。この話から、リーダーシップに一つの正解があるわけではなく、自分の強みや性格に合った形を見つけることが重要なのだと学んだ。
 さらに、「やりたいことが見つかった時に、それを成功させられる自分になっていることが重要」という考え方は今後のキャリアを考えるうえで非常に重要だと感じた。大学生のうちに将来何をしたいのかを明確に決めなければならないと考えがちだが、宇野氏自身も学生時代には、やりたいことが変化していたという。そのため、今すぐ一つの答えを決めるのではなく、「将来やりたいことが見つかった時に実現できるだけの能力や経験を身につけておくことが大切だ」という言葉は、これから就職活動や社会人生活を迎える自分にとって、とても参考になった。
 今回の講義を通して、未来を予測する力、仲間を信頼してチームをつくる力、そして思いついたことを実際の行動に移す力の重要性を学んだ。これからの学生生活では、ただ将来の正解を探すのではなく、「少し先の未来はどうなるのか」「自分はそこで何ができるのか」を考えながら、自分なりの地図を描いていきたい。そして、宇野氏が学生時代から抱いていた夢を一つずつ実現していったように、私も今できる挑戦を積み重ね、将来振り返った時に「あの時行動しておいてよかった」と思える学生生活にしていきたい。